長期的な脱炭素社会を目指したシナリオ下での 水素と合成メタンの役割の分析

 パリ協定では,長期目標として産業革命以前比で気温上昇が 2℃を十分下回るようにするとされており,また 1.5℃ に抑えるような努力を追求するとされている.また,IPCC 第5次評価報告書 1)の評価では,CO2 の累積排出量と気温上昇との間には線形に近い関係が見られることが示されている.すなわち,気温を安定化させようとすれば,気温上昇の水準に依らず,その時点では世界の正味 CO2排出量をほぼゼロにする必要がある.そして,2019 年 9 月に開催された国連気候行動サミットでは,66 カ国・地域が 2050 年 までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすると約束するなど,実質ゼロ排出(脱炭素化)への動きが加速している 2). また日本においても,2019 年 6 月に「長期低炭素発展戦略」 を国連へ提出し,「最終到達点としての「脱炭素社会」を掲げ,それを野心的に今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指すとともに,2050 年までに 80%の温室効果ガ スの削減に大胆に取り組む」ことを表明した 3).このように,「脱炭素」=「ネットゼロエミッション」に向けた排出削減対策にも注目が集まりつつある.ネットゼロに向けた大幅な排出削減のためには,例えば IPCC WG3 AR54)の第 7 章で指摘されているように,電化を促進し同時に電源の脱炭素化を進めることが重要である.しかし,すべての部門, 用途を電力のみで対応することが合理的かどうかは検討の余地が残る.そのため,水素やメタネーションによる合成メタンへの関心も高まってきている.

 メタネーションとは一般的には「メタン化」を意味するが,本論文では再エネ等のゼロエミッション電源や,化石燃料発電において CO2回収貯留(CCS)により CO2貯留した電源を用いて水電気分解により作られる水素など(以下, これらを総称して「ゼロエミッション水素」とする)に, 発電等から回収した CO2を合成してメタン化することを表すこととする.バリューチェーン全体では正味ゼロエミッションとなる.なお,メタネーションに用いる CO2は,通常,合成メタン燃焼時に再び大気放出される.つまり,CO2 はゼロエミッション水素の輸送媒体の役割として利用されるため,合成メタンは水素の一輸送形態と見ることができる.合成メタンの最大の利点は既存ガスインフラを利用できるという点である.また,電気や水素の利用が難しく, 炭化水素が求められるような一部の工業用途(溶接,ガラ ス製造など)でも,正味ゼロエミッションを実現できるという点も利点である.

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Author: castage

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