反応中間生成物と燃料性状による着火制御の研究(燃焼生成物としての含窒素炭化水素の解明)

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ガソリンエンジンの熱効率を向上させる手段として高圧縮比化や低回転速度高トルク運転が挙げられるが、これらの実現にはノックの抑制が必要である。そのため、自着火およびノック現象に関する数多くの研究が行われてきた。ノックは火炎伝播が終了する前に発生するエンドガス部における自着火が原因と考えられている1)が、そのメカニズムには、不明な点が多い。

これまでに筆者らは、飛行時間型質量分析計を備えた包括的2次元ガスクロマトグラフ(GC×GC-TOFMS)を用いて、定容燃焼容器に充填した混合気に対して、自着火前に生成される反応中間生成物の検討を行ってきた。その結果、n-heptaneを燃料とした場合には、低温酸化反応の反応中間生成物としてheptanoneやheptanedioneが生成されることが明らかとなった2)。

また、tolueneとn-heptaneの相互作用に着目して20mol%toluene+80mol%n-heptane/O2/Ar混合気を用いた実験では、低温酸化反応の過程においてtolueneのほとんどが消費され、各種の含酸素炭化水素が生成された。その中には、heptanedioneなどのn-heptaneの低温酸化反応による反応中間生成物や、tolueneから生成されたbenzaldehydeなどが含まれていた。この条件では、熱炎を伴う自着火は生じていないことから、検出された化合物は自着火前の反応で生成されたものである。このことから、n-heptaneとtolueneの間では、n-heptaneの低温酸化反応で生成された化合物やtolueneの反応生成物を介して、相互に影響を及ぼしていることが示唆された3)。このような相互に影響する反応においては、共存する化合物の分子構造による影響が無視できないと考えられる。

一方、 図1に示すtrinitrotoluene(TNT)やtrinitrobenzene(TNB)などは、爆薬に用いられる含窒素炭化水素であり、容易に自着火を生じると考えられる。TNTやTNBは、いずれも安定した化合物として知られているトルエンやベンゼンの骨格にニトロ基が付加していることから、ニトロ基を有する炭化水素は自着火を促進する効果があると考えられる。これらのことから、ニトロ基を構成する窒素分子や含窒素化合物は、自着火現象において重要な検討対象である。

そこで本研究では、n-heptaneとNO2を混合し、定容燃焼容器内に一定温度で保持した場合に生成される反応生成物について、GC×GC-TOFMSを用いて分析を行い、NO2がn-heptaneの低温酸化反応に及ぼす影響を検討するとともに、含窒素炭化水素の生成についても検討を行った。

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Author: castage

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