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低合金鋼は種々の環境で使用されるが,高力ボルトなどの高強度鋼は大気環境において遅れ破壊と呼ばれる水素脆化を起こすことが広く知られている.遅れ破壊の評価には,酸浸漬試験が過去多く行われている.また,PC(Pre–stressed Concrete)鋼棒もコンクリート環境で水素脆化を起こし,この評価には,Fédération Internationale de la Précontrainte(FIP)浴と呼ばれるチオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)水溶液への浸漬試験が多く用いられる.これらの試験では腐食反応を使って鋼材表面に水素を発生させ,その水素を鋼材中に侵入させる.一方,櫛田らは鋼材を腐食させることなく水素を添加する方法として,陰極電解法による遅れ破壊の評価法を提案した.隙間部や孔食底のpH が3.5 程度まで低下し得ることを考慮し,pH3.5 の酸環境における水素侵入を陰極水素チャージにより再現する方法である.山崎らは,鋼材が遅れ破壊を起こさない最大の水素濃度(限界水素濃度)を陰極チャージ後の定荷重試験により求め,環境からの吸蔵水素濃度と比較し,その大小関係に基づき実ボルトの遅れ破壊を評価する方法を提案した.陰極チャージには水素侵入促進の目的でNH4SCN を加えた水溶液を用いて,電流密度や時間を制御し,所望の量の水素を鋼材に添加する.環境からの吸蔵水素濃度には,乾湿繰り返し試験を行い鋼材中に吸蔵された水素濃度を測定し用いている