応力再分配効果が水素助長疲労き裂進展に及ぼす影響

 近年水素エネルギー利用が注目され,工業製品の実用化,水素社会インフラの整備が進められている。水素が鉄鋼材料の機械的特性を低下させること1–5) は古くから水素脆化として報告されている。そこで,現在では,70 MPa水素ステーションの普及に向け,金属材料の信頼性の高い利用方法と耐水素特性の高い高強度合金を見出すことが課題となっている6,7)。高圧水素環境中で使用する鋼材の要件は,許容応力,相対絞り比,強度低下率等が指標となっている6) が,それらの強度評価は引張試験結果をもとに制定されており,現在疲労破壊挙動に着目した研究が進められている8–11)。

 水素が機械的性質を劣化させる因子の一つとして,水素助長局所塑性変形(Hydrogen Enhanced Localized Plasticity: HELP)12,13)が知られる。水素はパイエルスポテンシャルの低下,転位間斥力の低下などを引き起こすため,水素集積部でのみ局所的に転位の易動度が上昇し,HELP現象が発現する。水素環境中の疲労破壊においては,HELPによりき裂進展速度が10倍程度加速し,疲労寿命が短くなる14–16)。この水素助長疲労き裂進展を考える上で注目すべき点は脆性ストライエーションの形成である。脆性ストラ イエーションは,一般の疲労現象で報告されるストライエーションと比較して,その間隔が大きく,破面の粗さが小さい。この特異なストライエーションの形成は粒内き裂進展の結果であることがFe-Si単結晶17) と商用多結晶フェライト鋼18)で,報告されている。また,粒内き裂進展した際の破面は擬へき開的でありながら,そのき裂進展経路は特定の劈開面に沿わない19)。このき裂進展挙動を説明するため,HELPに由来するマイクロボイドの形成と結合20)の観点から,局所的延性き裂進展機構が提案された18)。この モデルは,き裂先端のすべりによりき裂が開口し,き裂前方でボイド形成と結合が生じ,安定したき裂の延性成長過程が荷重負荷過程で発生するというモデルである。このモデルに基づく水素助長き裂進展機構では,水素局在化と塑性ひずみの局所化が重要因子として挙げられる21)。

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Author: castage

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