下水汚泥から水素を直接製造する技術に関する研究

 下水道ビジョン 21001)では、下水道システムを従来の汚水の効率的な排除・処理を目的としたものから、汚水の活用・再生といったものに転換することで、水や資源の循環を創出し、持続可能な循環型社会の一端となることを目指すと述べている。現在、日本に約 2200 ヶ所ある下水処理場のうち、約 300 ヶ所で下水汚泥から消化ガスが作られている 2)。さらなる活用として、下水汚泥を特に燃料に適した中温(約 500℃)及び低温(約 300 ℃)での炭化技術の開発が進められている 3)。一方、東日本大震災後、エネルギーの安定供給、地球温暖化を抑制するため低炭素社会ならびに日本再興戦略に位置づけられている水素社会の実現が強く望まれている。これら三つの要求を満足するエネルギー源としては、膨大に存在し、かつカーボンニュートラルであるバイオマスが挙げられ、特に必然的に集積され、再資源化率の低い下水汚泥が有望である。著者らは、これまでに下水汚泥を原料として消化工程を経ないで水素を直接製造するプロセスを開発してきた 4)。本法は、下水汚泥に水酸化カルシウムと水酸化ニッケルを混合し、それを水蒸気雰囲気下で加熱して水素を製造するものである。これまでは、下水汚泥に多量の水酸化カルシウムと水酸化ニッケルを使用してきた。そのため、固体残渣が多量に発生することと、水酸化ニッケルが占めるコストが高いことが課題となっていた。そこで本研究では、下水汚泥に水酸化カルシウムならびに水酸化ニッケルを混合し、水素を生成した後の固体残渣を再利用することを試みた。固体残渣を再利用できれば、固体残渣の発生量が抑えられ、水酸化ニッケルのコストを削減することが可能になる。加熱後の固体残渣を再利用した場合の水素生成量に与える影響について検討した。

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Author: castage

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