エネルギーキャリアとしての水素の社会実装展望 ―技術動向および市場動向について―

 2017 4 月、政府は「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」を設置し、同年末には2050 年を視野に入れた、我が国が将来目指すべきビジョンとしての「水素基本戦略」を提唱した1)。水素基本戦略は「2050 年の社会実装を前提とした2030 年までの行動計画(技術開発目標)を策定する」「水素を再生可能エネルギーと並ぶ選択肢にする」「水素のコストを従来のエネルギーと同じ程度のコストにする」という3 つの柱で構成されている。この戦略策定を受け2019 3 月、我が国資源エネルギー庁は「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を改訂し、具体的な技術開発目標として、家庭用燃料電池の将来価格目標、燃料電池自動車の普及目標、水素発電の具体化などが盛り込まれた2)。水素は燃焼反応後に水になるという極めてクリーンなエネルギーである一方、従来の熱力学第一・第二法則に基づけば、水素製造、圧縮・液化・運搬などサプライチェーン全体のエネルギー収支は、他のエネルギーキャリアと比較して劣らざるを得ないという課題がある。本稿では水素の社会実装を実現する前提条件を俯瞰し、それを実現する要素・システム技術の動向および市場動向を展望する。

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Author: castage

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