水素は危険物質か -水素を用いた新しい抗酸化療法の可能性

地球環境への影響の少ないクリーンエネルギーとして、水素社会の実現を目指した技術開発 が行われている。これまで水素は生体に対して、害も益もない不活性のガスとして考えられて いた。しかし水素と生体は密接な関係がある。人の体の中では腸内細菌から多量の水素ガスが 産生され、一部は肺から排出されているという事実はあまり知られていない。昨年日本医大・ 太田成男氏らの研究により、水素を抗酸化剤として用いる新規治療法が示された。水素を低濃 度で吸入することで、活性酸素のうちヒドロキシラジカルが選択的に消去され、その結果循環 遮断にともなう組織障害が抑えられると報告された。また水素を飽和させた水素水も、糖代謝 改善など、活性酸素の発生に伴う組織障害を抑制することが示された。著者も中部大学におい て、水素ガス、水素水を用いて生活習慣病に対する予防という観点から研究を進めている。

水素の物性および産業界での利用の現状 水素は危険な爆発物であるというイメージがあ る。おそらくこのイメージは、大型飛行船の衰退 の原因となった、ヒンデンブルク号爆発事故に起 因するところがあるのではと思われる。ヒンデン ブルク号は乗客・乗員97人をのせて1937年5月6 日に大西洋横断後アメリカ・ニュージャージー州 で着陸時に突然爆発し大炎上した。この様子は映 像として記録され、現在YOuTube等で閲覧する ことも可能である3)。事故原因は当時浮揚ガスと して用いられていた水素ガスの爆発とされ、水素 イコール危険のイメージが流布されることになっ た。しかし、 1997年に当時の映像解析、実物の外皮の分析などより、実際の事故の原因は船体外皮 の酸化鉄・アルミニウム混合塗料が静電気で発火 炎上したものとの説が有力視されている4)。一方 身近なところでは小中学校の化学実験で、水素を 発生させた容器が爆発し、容器のガラスが飛び散 り、けがをしたといった報道を時々見かける。し かしこうした事故は、実験操作上の安全管理の不 備もあるとされ、安全に注意した水素実験を推奨 している報告もある5)。表1に水素物性のまとめ を示す。水素の燃焼域は4-75%と比較的広く、 安全管理を怠ると爆発事故につながりうるが、ガ ソリンと比べてより危険な物質というわけではな く、また軽く拡散が早いことより、プロパンガス のように漏れた後に貯溜して爆発を起こすことも ない。適切な管理により、安全に扱える気体であ るようだ。

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Author: castage

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