水素チャージ下低速度引張せん断試験による高張力鋼板のス ポット溶接部の迅速水素脆化評価法

 自動車ボディの軽量化を目的に 980 MPa 級の高張力鋼板や 1500 MPa 超級のホットスタンプ材が車体に適用されつつある1).これらの接合には,従来鋼板と同様にスポット溶接が用いられる.しかし,スポット溶接した高張力鋼板の溶融部(ナゲット)は,急冷凝固されるため,水素脆化感受性が比較的低い高張力鋼板であっても,組織変化や硬さの増加により2),ナゲット周辺の水素脆化感受性が高まることが懸念される.実際,溶接部の硬さおよび残留応力が高くなる条件でアーク溶接などの溶融接合を行った場合,環境中の水分や溶加材から発生・侵入した水素により,水素割れ(Hydrogen cracking)が発生することが知られている3).高張力鋼板のアーク溶接部の水素割れについて多くの先行研究4–10)がなされており,溶接金属の強度,拡散性水素量,残留応力が水素脆化感受性に大きな影響を及ぼすとされている.しかし,厚板のアーク溶接中の水素脆化現象や要因解明に関する研究が多く,薄板のスポット溶接部の耐水素脆化特性に関する評価事例は少ない11,12).多種多様な材料組合せをスポット溶接する上では,塗装工程や使用環境から侵入する水素によって引き起こされる水素脆化挙動を鑑みて,設計要件を満足する適正溶接条件を決定する必要がある.したがって,スポット溶接部の耐水素脆化特性評価を把握するために,接合強度に対する拡散性水素量の影響を定量的かつ迅速に評価可能な手法が望まれる.

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Author: castage

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