超プロトン伝導性の出現機構 ― 0 次元水素結合型超プロトン伝導体を例として ―

 近年,Li イオン電池のように,電気を蓄える技術(蓄電技術)は飛躍的に向上している.しかしながら,蓄電は未だ枯渇燃料を使用した電力(例えば火力発電による電力)を単に蓄えているにすぎず,電気を自ら生むものではない.そのため,蓄電だけでは環境低負荷エネルギーを実現できず,新しいクリーンな次世代エネルギーの研究・開発が必要不可欠である.よく知られているように,水素を利用するエネルギーは次世代のクリーンエネルギーとして注目されている.特に水素と酸素の化学反応から直接エネルギーを生成する燃料電池は分散型の発電が可能な災害に強い次世代エネルギーとして注目されている.図1 は水素型燃料電池電解質として必要不可欠であるプロトン伝導を有する物質について,プロトン伝導度の温度依存性を示したものである(1).図1に示されるように,さまざまな固体のプロトン伝導体が存在し,高温度領域ではセラミック型の超プロトン伝導体,低温度領域では高分子型の超プロトン伝導体が存在する.高温度領域のプロトン伝導は結晶内にある格子欠陥を利用したプロトン伝導であり,低温度領域におけるプロトン伝導体では水和水を介したプロトン伝導が実現されている.一方,100℃~250℃の中低温度領域において,固体状態で10-2S/cm程度の高いプロトン伝導度を有するものは非常に少なく,IIPAP (imidazole intercalated sulfonated polyaromatic polymer),または本論文で取り上げている水素結合型超プロ トン電体(M3H(XO4)2,CsHXO4, CsH2PO4)くらいである(2~21).高温での動作は高い触媒効率を引き出すことができるが,取り扱いが容易ではなく,腐食も大きい.低温で動作するプロトン伝導体は取り扱いが簡便であり,腐食も小さいが,触媒効率や廃熱利用といった観点では劣る.それゆえ,これらの間でバランスの取れた中低温領域における燃料電池の開発が強く求められている.この中低温度領域に存在するプロトン伝導体の空白領域を充填することは燃料電池の市場への飛躍的導入に対してきわめて重要である.本論文では,この空白温度領域を充填できる水素結合型超プロトン伝導体について紹介し,そのプロトン伝導出現機構とその特性について示す.

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Author: castage

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